【漫画】「聲の形」を読みました。
「過去と今と未来。僕らは生きている。」
苦しい。
誰かの感想を読みたい、後日談を読みたい。
でも誰かの感想で「植野は許せない」的な感想は読みたくない、、、、
そういう漫画じゃないだろ、違うんだ、これはそういうのを含めた漫画だろ、、と思ってしまってモヤモヤしてしまうからだ。
だからブログに感想を綴ることにする。そうしないと眠れそうにない。うわあ〜〜〜と胸の中が暴れ出してまんじりともできない。
「聲の形」は知っていた。話題になったことも知っていたし、きっといい作品なんだろうと思っていた。
でも読みたくなかった。なぜならマガジンだから。そんで障害といじめを扱ったテーマだから。ドロドロのぐちょぐちょで、心が切り刻まれるような漫画に違いない。体調が悪い時に読んだら闇に飲まれそうだから読みたくない、そう思っていた。
だが、いざ全巻一気読みすると、「これはすごい漫画だ、、」と思ってしまった。
とりあえず、率直な感情は「苦しい」
漫画を読んでこんな気持ちになったのは初めてかもしれない。
様々な感情が渦巻いて、ああああああああ、苦しい、となってしまう。
「石田はいい奴か、悪い奴か?」
石田はいいやつなのか悪いやつなのか。きっとどちらでもないのだろう。
そういった尺度でこの作品の登場人物を品定めするのは違うんじゃないだろうか。
石田は良くも悪くもバカで素直だった。
誰もが石田になる可能性があるのに、石田に石を投げる権利があるだろうか?
過去に何一つ過ちを犯したことのない人なんていない。
確かに石田は取り返しのつかない過ちを犯した。
まだ何も知らない、小学校時代に。
石田はもともと嫌なやつだったのか?
西宮ともっと違うタイミングで会っていたらどうなっていた?
石田だけ悪いと言えるのか?
誰が石田を責められるのだろう。
誰もが石田にならないという確証はあるのだろうか。
石田は良くも悪くもバカで素直だった。
やったことは悪いことだ。
だが僕たちはそれを責める権利があるだろうか、他人事と捉えていいのだろうか、
そんな気持ちにさせられた。
印象的というか、個人的に好きなシーンは一巻の後半だ。
石田は西宮をいじめた後、クラスメイトにいじめられる。
混乱と痛みの中で、石田は自分の尊厳を失っていったのだろう。
石田は西宮に弁償した170万を貯め、母に渡し、西宮に謝罪してから死のうとした。
なんかわかるなあ、と思ってしまった。
極端だけれど、石田は苦しみから逃れるために一つの方法を思いついたのだろう。
追い詰められ、後悔に押し潰されそうになりながらも、この状況から楽になるためには
全てを精算して死ぬしかない、ということをずっと考えながらバイトに勤しんでいたのだろう。
決断自体はすごく重いんだけど、その思いきりがよくさっぱりした感じと行動力に、石田の素直さといい意味の愚直さが現れている描写だと思う。
漫画の表現としても、セリフがなく自分の将来を悲観するシーンがあったり、日常のさりげなく死にたくなるくらいショックなシーンがあったり、テンポよく読めるしコミカルなのに、石田が死にたいと思う説得力があって、なんというか漫画がうまいと思う。
「気持ち悪い」
反吐が出るシーンがたくさんある。
誰が正しいのか、何が正しいのか、そもそも何を正しいとジャッジすること自体が正しくないのではないかと思ってしまうほどに。ぐちゃぐちゃにかき乱される。心を。特に川井さんと植野さんと小学校の先生に。苦しい、苦しい、読むのが辛い。だけど読んでしまう。それはこの漫画が漫画としてとても上手だからではないか。僕は「聲の形」を読む前、「障害といじめっていう話題になりそうな題材だから話題になってる」とかめちゃくちゃ失礼なことを考えていた。謝りたい。本当にごめんなさい。この漫画は、漫画として本当にうまい。題材云々じゃない。作者の漫画家としての力量が高い。だから読んでしまう。けど苦しい。
植野はどうしてこんなことを言ってしまうんだろう、なんですぐ手が出るんだろう、、
川井さんはどうしてこんな気持ち悪い言葉を言うんだろう、、、
先生はどうしてこんなに嫌な気持ちになるんだろう、、、、
なんでこの作者はこんなシーン入れるんだ、こんな、うわああああああああ、となる。
わからない、人間ってわからない。
特に5巻とか、苦しい。
本当に読んでいて苦しい。
6巻もほんと苦しい。
この漫画を読んでいると分からなくなる。
植野は間違ってるのか?川井さんはおかしい人なのか?先生は歪んでるのか?
それぞれ考えていることは、分からなくもないと思ってしまう。
だから、「こいつはまじで悪いやつだ」「敵だ」と切り離して読むことができない。
いや、最後まで気持ち悪いんだけども、、、、
誰にだって自分なりの正義があって、
声の大きくて強い人がそれを振りかざすから正しいように見えて。
だからこそ、何も主張せず笑顔な西宮は、一体何を守りたいのだろう。
悲しくなってしまった。
「過去の精算はできるのか?」
素晴らしいと思うのが、石田のコミュ障ぶりと言うか人間不信っぽさの描写がうまいこと。自分も高校時代ほぼ友達がおらずクラスで孤立している人間だったが、ずっと1人でいるから無性に周りが気になって苦しくて、ずっといろいろなことを頭で考えてしまってキョドる、みたいなのはめちゃくちゃわかるなあ、と思ってしまった。この辺のリアリティとかもこの漫画の没入かんを高めるというか、世界観の構築に役立っていると思う。
石田は本当に過去に苦しんでいる。
自分をいじめたクラスメイトのことを考えるとつらいのだ。
僕だったら、どうだろうか。
毎日どうやって復讐しようか考えるかもしれない。
でも、そうやっていじめた側のことをずっと考えている自分が惨めで泣くかもしれない。
過去は消せない。
忘れようとしても、時折フラッシュバックして僕らを苦しめる。
復讐は何も生まないなんてわかっていても、
ほんの少しの安堵が得られるなら、その復讐を止める手立てなどあるのだろうか。
わからない。
「聲の形」には、小学校時代の同級生が再登場する。
石田をいじめたのに、また関わってる。
でも石田だって、西宮をいじめたのに、また関わってる。
謝罪の質?本人の気持ち?「許す」「許さない」の基準って何?
ぜんぶ見る、ぜんぶ聞く。
物語の終盤で、石田は人の顔につけていた「バツ印」を剥がしていく。
現実と向き合って、生きていこうとする石田の意思がここにある。
そして最終話では、成人式に出席する。
過去、今、未来と向き合い、生きていくことを選んだ石田。
怖気づく西宮の手を引っ張り、扉を開けるラストシーン。
キスもハグもない漫画だけど、このシーンは結婚式に見えたり。
いや、でもこれはラブコメではない。
恋愛も心の動きの一つであって全てではない。もうこの登場人物たちはそういうものを超越していると思う。
話はそれたが、過去を決別するわけでもなく、向き合うことに決めたのは、
きっと西宮と再び会って話せたからなのだろう、と思う。
そう思うと、なぜ石田は西宮に再び会って話そうとしたのだろうか。
読み返すと、石田はこう言っている。
「あの時 お互いのこえが聞こえてたら どんなに良かったか」
石田は後悔している。
もしあのとき伝わっていたら、理解しようとしていたら、もっと違う方法が取れていたら、
こえが伝わらなかったばかりに、
最終巻で病院を抜け出し、西宮と再開した石田はこう言う。
「君に 生きるのを手伝ってほしい」
石田は死のうと思っていた。西宮も死のうと思っていた。
その2人が、出会って、この言葉を石田が言ったことは本当に大きな意味を持つんだろうな、と思う。
あれだけ伝えられなかった2人が、このシーンでは必死になって、伝えようとしている。
泣いている西宮を抱きしめようとして、躊躇して肩に手を置く石田が切ないが、、、、
まとめたい
この漫画はすごい。面白い。
個人的に、西宮が本当に可愛くて表情がとてもいいと思うし、この作品にアクセントを与えていると思う。また、結弦が本当にいい。とてもいい。結弦はこの漫画の裏主人公ではないかと思ってしまうくらい良い。石田と兄弟みたいに仲が良いのがとても良い関係性だと思いました。西宮家は全員良くて、お母さんもとても良いキャラクターだなと思います。無言のビンタとか。
また、映画も見てみようと思います。
後日談とかまた描いてくれないかな、、、