朝井リョウ「何者」を読んで喰らった人の感想
朝井リョウの「何者」を読んだ。
読み終わってまず、「俺もそうだな〜ああ〜」と、やられたと思った。
読んでいる最中は、主人公の拓人に感情移入していた。
周囲の意識の高い言葉を身に纏っている人たちを斜めに見て、冷静に俯瞰する。
その切れ味に夢中になっていた。
それが最後、油断していた読者の自分が突然斬られた感覚になった。
引き込まれて引き込まれて、最後に真っ二つになった。
感想を書くと、そんな感じです。
順を追って書くと、
まず、主人公の拓人は就活生で、同じ大学の3,4人と関わりながら、話が進んでいきます。
拓人は周りの人を見ながら、分析をします。
何者かになりたい周りを見て、自分も何者でもないのだと、最後に気付くわけなのですが、
その銃口が感情移入してた読者に向けられる感じ、痺れました。
「何者」を読むと、
こうやって感想を書いている自分ですら、お前は何者なんだよと言われる感じがするし、
そういうツッコミというか嘲笑を周囲に普段から心の底で向けてるような自分だから、
そういうのって自分にも当てはまるし、自分だけ特別にはなれない、ということを気づけない。
そういう堂々巡りのような気分になる。
けど、それを直せよ、みたいなことではなく、
結局みんな何者でもなく、自分でしかなく、カッコ悪くてもなんでも生きていくしかないわけで、自分だけそこから離れるのは無理で、、
自分だけが周りに向けている正論は、正しいことを言える自分を肯定したいだけで、
相手のためなんかじゃなくて。
主人公の拓人も、そうやっていないと自分を肯定できない、観察者であることで何者かになろうとした、ということで。
それが、自分自身が周りを見下してなんとか自分を保ってるもんだから、
苦しくなってしまった。
でも同時に気持ち良さもあった。
そういう作品はやっぱ面白いってことなんだろうなって思った。
少し自分を省みつつ、自分は結局自分でしかないよな、と思いつつ謙虚にしよう、と改めようと思ってしまうくらい、力のある小説でした。