【コメディの金字塔】湯上くんは友達がいない、全巻読破した余韻を綴る
(ラブ)コメディの金字塔、
これぞサンデーの(ラブ)コメだ!
読みました。「湯上くんは友達がいない」全16巻。
ネタバレを含むというか、この記事は全巻読破して、「続きは?続きはないの?苦しい、、」となっている僕のお仲間が読むことを想定しているので、まだ読んでないよという方はブラウザバック推奨です。
1.湯上くんとの出会い
存在は知ってたし、なんなら3年前くらいに2、3巻は読んだ覚えはあったのですが、「サンデーうぇぶり」で試し読みして、その時たまたま読んだ66話と67話がめちゃくちゃ面白くて、その日のうちに全巻Kindleで買って読んでしまいました。そして気づいたのが、たまたま無料公開されていたその2話が、この漫画の中でもトップクラスに面白い話であったということです。
なんでしょうね、この情緒不安定な綿貫さんがめちゃくちゃ可愛いし面白いです
ツッコミに回らざるを得なくなる湯上くんも面白い。
67話の耳たぶの下りは言わずもがなです。最高です。
もし違う話が無料公開されていたら果たして全巻購入しただろうか?いや、他の話も面白いんですが、単発の破壊力では66,67話を上回るものはないのではないでしょうか。だとするとこの話を読めたのは運命のような気がします。言い過ぎか
2.どんな漫画なのか
端的に言えば、「変人主人公と幸薄いヒロインが織りなす妙にリアルな学園(ラブ?)(ギャグ)コメディ」です。全然端的に言えてないな。ジャンル分けが難しい。
なぜならジャンル分けすることに自分が抵抗があるためです。自分はこの漫画を、タイトルだけ見て「ああ、流行りの友達いない系ね」みたいな穿った目線で見ていました。誤解のないように言っておけば、僕は友達いない系は好きなジャンルです。(俺ガイル全巻集めていました)だけどラノベみたいなタイトルで流行りに乗ってんのかみたいな見方をしていたのは事実です。
しかし読んでみると、この漫画においてジャンル分けは弊害を生むと分かります。
確かに友達いない系だけど、他の漫画とは一線を画す、、
なぜなら、本当に主人公が友達がいないことに対して不満を感じていない。
ハーレムにもなったりしない。むしろラブコメと言っていいのか怪しいほどに恋愛要素が薄い。(後述しますがこれは良い部分です)
だけど、だらだらと?ゆっくりと物語が進んで行く。
雰囲気は「動物のお医者さん」に似てる気がする。あのゆるゆると進む感じが。
ギャグの感じは、絵も相待って「ギャグ漫画日和」っぽいと感じた。
そして全体を一貫する「サンデー感」は、高橋留美子の影響を感じる。
1話完結というわけでもなく、ゆるゆると進んで行く。時間はゆっくりだけど進んで行く。それが16巻まで、というのは綺麗なまとまり方かもしれない。
とにかく不思議な漫画でした。地味と言われたらそれまでだし、人に対してめっちゃ勧める感じの漫画ではないけど、こうして全巻読破したあとにグーグルの検索窓に「湯上くんは友達がいない 感想」「湯上くん アニメ化」などと調べて供給を得ようとし、感想を誰かと共有したいと欲するも十分ではなく、それなら自分で書こうとブログに感想を書き綴っているくらいには心に残った漫画です。
3.哲学的な面白さ
何が面白いのかと言われると答えに迷うけど、書き出してみると、セリフの言い回しだったり、湯上くんの妙に納得してしまう屁理屈とか、綿貫さんの素朴なモノローグとか、とにかく作品全体から醸し出される言い知れぬ「空気感」が、とにかくこの漫画の面白さであると思う。
サンデーっぽい部分として、コマが多いというか、とにかく丁寧なコマ割りがされている、つまり画面が地味だから、流し読みするとすげーつまんなそうに見える。主人公のビジュアルも地味だし、というか全キャラのデザインが地味だし
だけど後半になるにつれ、漫画に奥行きが出てくるというか、単調さがなくなってきたような印象を受ける。それは絵がうまくなったこともあるだろうけど、ちょっと少女漫画っぽい演出が増えたことで単調さがなくなったのかなとも思う。前半は画面が単調かつセリフ中心の漫画だったからギャグ漫画日和っぽいと思ったのかな。
だとしても、そのセリフの面白さやキャラクターが読者の心を掴み、5回で終わりだった予定が16巻まで続いたというのはやはり面白かったからだと思う。
湯上くんのキャラクターは、一言で言えば「見てる分には面白いけど関わりたくない」
つまり絶妙に友達になりたくないキャラクターだ。それが最後まで一貫していることがこの漫画の良さでもある。
しかし、悪いやつではない。嫌悪感を持つギリギリのラインを保っていて、なんだかんだ最後の方は湯上に慣れてくる。なんだか自分自身が、湯上くんのクラスメイトになったような感じだ。「こいつはダメなとこもあるけど、良いところもあるからいいや」となる。そうなると、「自分だってそうじゃないか?人のこと言えなくないか?」となる。
そう、湯上くんはいいところもあるけど、ダメなところもたくさんある。だけど、彼はそれが顕著なだけであって、全員が彼と同じようにいいところとダメなところがある。それを、この漫画を読んでいると気づく。「あれ?湯上確かに悪いけど、結構どっこいどっこいじゃね?」と。キャラクターは地味だけどリアルに個性豊かで、変な部分や嫌な部分、面白い部分がたくさんある。そのキャラクター同士が互いに影響を与え合って、作品全体に独特の空気感をもたらしている。湯上くんは極端なだけで悪いやつではない。というか作品全体見ても悪いやつはいない。誰しもが良い部分と悪い部分を合わせ持ち、それが一歩引いたフラットな目線から描かれている。だから、安心する。この作品は偏ってない、だからこそ地味なんだけれど、何かを恣意的に切り取って伝えようとする意思や意図が感じにくい漫画であると思う。だから不思議な安心感がある。
サンデーだから出せた持ち味のような気がするな、、
4.個人的に好きな部分
僕はこの漫画の、妙に哲学的な部分が好きなのですが、
例えばこのシーン
湯上くんの行動理念というか、哲学が垣間見えるシーン。
うまく言えないんですが、こういう風に何か自分なりに信じて生きてる人に憧れます。
どういう風に生きても良いと思うし、湯上くんの生き方が正解だとかは全然思いません。けど、何か自分の生き方に対して納得感があったり、自分で自分を肯定できる何かがある人は良いな、と思います。
5.ラストについて
ラブコメに振り切らなかった部分をすごく僕は良いと思っています。
変に拗れることもくっつくこともなく、だけど平行線というわけでもない関係。
この漫画のテーマは関係性なのかなと思いますが、それが安易な恋愛に消費されないのが良いと思いました。いや、そうなったとしても悪くはないと思いますが、恋愛関係になるわけではなく、あくまでコメディとして16巻続いていったほうがこの漫画の良さは現れたと思います。(売れるかどうかはともかく。僕はこっちの方が好きです。)
だけどラストはしっかり読者の求めるものを描いてくれた感じはしました。
もっと描いて欲しいくらいでしたが、綺麗なラストだったなと思います。
特に何も言うことはないなと思います。この7年間作者が描いてきて、終わり方はこうだろう、というものを丁寧に描いたものがあのラストだったのではないかと。ありがとうございます。
6.終わりに
湯上くんは友達がいない、
青春群像劇と言われると、そんな爽やかか?となるし
ラブコメと言われると、いやいやこれはラブコメではない、となるし
言えることは、学校には色々な人がいて、その中で関係性が変わりながら成長して行く、みたいな話を丁寧に描いた作品です。
無限に読みたかった気もするし、でも時間が進んでいって良かったとも思います。
でも後日談はもっと読みたい!
アニメ化して欲しい!
もっと余韻に浸りたーーーい!!
いつまでも待ってます!